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2006年6月24日 (土)

グローバリズムという経済破綻

新聞やテレビのニュースでは「景気」の動向が上向いてきているという話が以前よりも増えてきている。にも拘らず、片田舎の地方都市に住む我々に、その実感は薄い。車は以前と違ってローンで買わなければならなくなったし、仕事の機材なども買い取りではなくリースが大流行。生活は相変わらず苦しく、税金だけが上がり続けている。
日本全体の動向を見ても、景気の良い話は一部だけで、経済的格差は拡がり続け、貯金すらできない家庭は以前よりも増加しているという。いや、日本だけではない。世界全体を見渡せば、毎日の食事にも事欠くような人々はたくさんいるし、「先進国」と呼ばれる国々の若者の中でも働きたくても仕事のない人がゴロゴロいる。
これが「グローバリズム」の「成果」である。それによって利益を得ているごく一部の人々の色眼鏡による解釈はその辺の棚にでもうっちゃって、純粋に世界の人々の生存や生活バランスを考えれば、世界経済はバランスを崩して破綻してしまった、と言ってしまっても良いかも知れない。
英米式「グローバリズム」によれば、市場を「神の見えざる手」に委ねることが経済発展のキーワードらしいが、ニーチェの言うように「神は死んだ」以上、その「見えざる手」も自然な形で市場をコントロールする能力を喪失している。その結果、欲望の暴走によって「経済発展」を加速しようとする人間の皮を被った悪魔たちが、関係破壊・自然破壊・生命破壊を推し進めているように見える。
確かに、人間が生きていく上において、欲望は、大切なエネルギーの一つである。けれども、その暴走は多くのものを破壊し、死に至らしめる。だからこそ、偉大な宗教家たちは欲望の暴走を抑えるべく彼らに従うものたちを指導していたのである。キリスト、ブッダ、フランチェスコ、空也…。多くの聖人の姿は、華美な装飾や贅沢を放棄し、質素であるからこそ胸を打つ。そして、自分よりも弱い立場にいる人々に目を向けることが出来れば、自然に「我唯足るを知る」という智慧が理解でき、欲望の暴走を抑えられるのではないかと思う。
逆に、弱者に目を向ける想像力を失ってしまうと、欲望がさらに暴走し、「勝つか、負けるか」だけの世界になってしまう。それはやがて「手段を選ばずに勝つ」になる。そうした世界観を持ってしまえば、「自分がそうだから周りもそうに違いない」ということになり、心を許せる関係を失って孤立してしまう。さらに、「誰かに手段を選ばずに攻撃される」恐怖感を持ち続けなければならなくなってしまい、そうした状況が極端に進めば、「周りはすべて敵」になってしまうだろう。それによって、「勝ち組」になりたくさんのお金を得られるかも知れないが、それで幸福は買えるだろうか。少なくとも私自身の幸福は豊かな関係性の中にあるので、お金では決して買えない(もちろんお金はないよりも、生きていく上に最低限必要な分はあった方が良いし、その程度であれば可能な限り確保しておきたいが……)と思っている。
加えて、「勝ち組」の問題は、コスト削減のために「安全」「安心」「環境」への費用負担を削ろうとすることであろう。その結果、社会や自然のバランスは崩れ、治安の悪化や自然災害の多発となって還ってくる。治安維持のコストや災害復旧などのコストをも含めて現在の「グローバル経済」を再検討したとき、果たして経済効率は以前よりも良くなっているだろうか。もちろん私は経済学者ではないので、詳細な計算をする能力はないし、またそれをしようという強い意志もない。したがって、現在の実感だけでの判断になるが、英米(特にアメリカ)型「グローバル経済」は世界経済のバランスを崩壊させて治安悪化と環境破壊を招き、世界経済に打撃を与え続けているように感じられる。そしてそれは、ヨーロッパでの環境保護運動の主張や、マイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロバイン」や「華氏九一一」などのドキュメンタリー映画の告発などから見ても、決して私一人の実感ではないと思われるのである。
イラク侵略戦争や核拡散の現状も、そうした視点から見れば、あっけないほどに明白になる。サダム・フセインを擁護するつもりはさらさらないが、偽情報の積み重ねで開戦した後、イラクの石油施設がどこの国の会社に払い下げられたかを知れば、どうした人々の欲望の暴走によってことが進められたかは推察できる。さらに、他の民事的に重要な施設よりもイラクの人々の日常生活とは関係が薄い石油施設が優先的に警備されている現実からすれば、その推察が正しいか否かを判断するのは、色眼鏡をメディア・コントロールによってかけさせられていないまともな人ならば簡単だろう。
アメリカ兵による捕虜の虐待・人権侵害事件も、マイケル・ムーアの映画が教えてくれるように、地元での就職が出来ずに軍隊に入るしかない若者たちが派遣されている以上、起きるべくして起こったと言えよう。経済的に痛めつけられて精神的に荒んだ人間が無意識的に弱者を痛めつけることで精神のバランスを保とうとする。そして、その結果、根本原因としての為政者の悪政は隠蔽されるという構造は、江戸幕府の差別政策の効果を知っている者から見れば、共通のものであることが分かる。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、捕虜の虐待・人権侵害を消滅させるためには、大企業優先ではなく、一般の人々が普通に働いて普通に生活できる国を作るしかないのだろう。(私などはこれこそが「普通の国」だと思うが…)アメリカ政府は外交的には「人権」を言いながら、自国内においては経済的弱者を放置することでその国際的な義務を怠っている。そしてその問題を直視せずに戦争を続けることで内外の視線をそこから逸らそうとしているのである。
核拡散の流れも、実際には核を持っていなかったイラクが侵略され、核を持っている可能性がそれなりに高い北朝鮮が今なお攻撃されずにいる現実からすれば、多くの国が「自国防衛」のために核武装に踏み切らざるを得ない。その動きを止めるためには、核保有国が自ら、核兵器の削減に取り組まない限り説得力は持ち得ない。経済制裁では事は解決しないのである。
こうした流れを止めるために出来ることは何か。個人としては、まず知る事であり、意見を(特にNO!を)発信していく事だろう。もちろん、個人レベルでは大した事は出来ない。けれども、つながれば大きな流れを作る事も不可能ではない。良い意味でのグローバルな技術の発展は、その気になれば他国の人々ともつながれる道を開いてくれている。それに向かって、諦めずに一歩一歩進んでいくことが、十年後、百年後につながると信じて、自分に恥じない行動していきたいと思う。

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» 10年後の日本 [最新本にコメント!批評n比較]
いきなりTBごめんなさい。一緒にコメントしましょー。 [続きを読む]

受信: 2006年6月24日 (土) 17時53分

» 構造改革 [共通テーマ]
いろいろといわれている改革ですが、どう思いますか?ご意見をどうぞ。外国での例も歓迎です。 [続きを読む]

受信: 2006年6月25日 (日) 23時28分

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