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2006年8月 7日 (月)

「勝利」の先にあるもの

少年ジャンプや少年サンデーといった少年誌のマンガをよく読んでいるが、スポーツ系にしろ、冒険ものにしろ、敵やライバルに対して友情や愛に支えられながら努力を重ねて勝利を手にする作品が結構多い。マンガばかりでなく、ゲームでもファンタジー系のものを中心に、同じようなパターンはよく見られる。

 

もちろん、読んだり遊んだりするのはそれなりに楽しい。しかし、物語が続く限り、主人公に安住の時間はない。一つの敵を倒しても、主人公の前にさらなる強敵が出現するからである。そして、強敵の背景にある世界はどんどん拡大を続ける。編集の要請にしろファンの希望にしろ、物語を続ける限り、作者は無限に強敵を作り出し、世界を広げざるを得なくなるのである。

 

こうした構造は、現代資本主義の『成長神話』のイメージと重なってくる。経済成長を続けるためには競争に勝ち、市場を拡大し続けなければならない。イラク戦争も、「敵」に勝ち「イスラム世界」を欧米資本主義の市場に組み入れることを目的に強行されたと考えれば、それなりに納得がいく。治安が回復しないのに石油輸出のための「復興」が最優先で進められている現実が何よりもそれを物語っているからである。イスラエルの暴挙も、そうしたアメリカ政府の姿勢が停戦に消極的であることを見越してこそ出来ることであろう。

 

「勝利」のためには「敵」が必要である。しかし、「敵」は本当に「敵」なのだろうか。

子どもの頃夢中になっていたテレビ番組の主人公の台詞で、強く印象に残っているものが二つある。一つは「宇宙戦艦ヤマト」の主人公/古代進がガミラスとの決戦の後口にした「負けた者はどうなる?」という言葉、そしてもう一つは「ウルトラセブン」の主人公/モロボシ・ダンが一つの星を一発で破壊する超兵器R1号の開発に対して口にした「血を吐きながら走り続けるマラソン」という言葉である。

 

軍拡競争の愚かさは冷戦時代を通じて多くの人々が身にしみた筈である。だが、軍拡だけでなく、経済競争も、実は、同じ種類の愚かさをその内に持っているのではないだろうか。「勝つ」ことだけを目的にして手段を選ばずに走り続ければ、その過程で「負けた者」が「敵」になる。また「勝つ」ために無理やり競争相手や異質な存在を「敵」にして「競走」そのものを強いる場合も出てくるだろう。つまり勝ち続ければどんどん「敵」が増えていくことになるが、「負けない」ためには勝ち続けるしかなくなってしまうのである。

 

それが、本当に「幸福」への道につながるだろうか。答えは否である。競争そのものを否定するのはバカげているが、「競争」に呑み込まれて豊かなものを見失ってしまうのはそれに勝るとも劣らない愚かなことである。人間社会が愚かな迷宮から一日も早く抜け出すことを願ってやまない。

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