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2007年1月13日 (土)

夢への道しるべ…オードリー・ヘプバーンの輝き

激動する時代の中で、あるいは長い時を隔ててもその輝きを失わないものがある。「モナ・リザ」、『ロミオとジュリエット』、『源氏物語』、ビートルズ…。私の意識の中では『ローマの休日』という映画もそうした存在の一つである。『ローマの休日』と聞けば、ほとんどの人があのアン王女の愛らしく清楚で気品のある笑顔をイメージするだろう。この「マドンナ・えっせい」の最後のページは、アン王女を演じたオードリー・ヘプバーンを鍵にして文章を綴っていきたい。

 

存在自体の輝き。TVや映画のスター、あるいは歌手を見てそれを感じる人は少なくない。しかし、最近の日本を見渡してみると、オードリーほど長く、またオードリーほど気品に満ちた存在感を感じられる歌手やスターはみられない。もちろん、一瞬、あるいは一定の時期に渡って輝く存在はみられても、その持続は難しいのである。

 

その理由の一つに、気品の欠如がある。お金や生まれではなく、背後に存在そのものの重みを感じさせる何か。それは、人生の闇を真摯に見つめながらも、欲望に流されず、そして希望を捨てずに生き続ける姿勢から滲み出して来るものではないだろうか。戦争の影、父親との別れ、結婚の光と闇…。オードリー・ヘプバーンの人生にも、様々な幸福と不幸がちりばめられていただろう。しかし、彼女はスクリーンではいつも輝き続けた。いや、彼女がこの世を去った今も、その作品は輝き続けているのである。

 

今、日本は不況の中に喘いでいる。中高年男性の自殺は急増し、その数は、交通事故死のそれを上回っているという。子どもたちは将来に対する夢を失い、空ろな心をモノとイメージの消費で埋めながらもがいている。世界恐慌の始まった一九二九年、ベルギーに生まれたオードリーは、当然、あの第二次世界大戦を体験している世代であり、戦争が彼女と父親を引き裂いていくのだが、その不幸と、今の日本の不幸とはどちらが深いだろうか。それを考えた時、オードリーのあの輝きには意味深いものを感じてしまう。

 

いくつか、オードリーの作品を挙げてみよう。『ローマの休日』『パリの恋人』『ティファニーで朝食を』『マイ・フェア・レディー』…。それらを思い浮かべてみれば、多くの作品が「夢」であることが分かる。現実の生活はともかく、彼女は、多くのスタッフとともに真摯な姿勢で「夢」を作り続けた。そしてそれは、映画を見る多くの人々の夢や希望を紡ぎ、心を満たしていった。スクリーン上の彼女は、プロとして自らの内にある影を微塵も見せず、輝き続けた。彼女の気品は、そうした姿勢やそれを支えた彼女自身の芯の強さの中から生まれたのではないかと思われる。

 

翻って、私達自身を眺めてみよう。

 

人間は、ある意味では、一人ひとりが様々な不幸を背負っている。しかし、そうした現実を見つめ、立ち向かう強さも、人間は持ち得ている。その一方で、それを妨げる弱さもまた、人間は自身の心の内に持っている。例えば、身勝手な欲望や甘えがそれである。暴走する欲望や甘えは人との関係をぶち壊し、自分自身の生活を荒らし、どれほどモノで埋めても埋めることのできない空洞を心の内に作り出す。その空洞をモノや快楽でごまかそうとするからこそ、私達は、夢や希望を見失ってしまうのかも知れない。

 

構造改革と財政再建を旗印に小泉内閣が誕生し安倍内閣へと変わったが、僅かながら持っていた期待はすでに失望へと変わっている。強者が自らの利権を守ることに汲々とし、結果として弱者により多くの痛みを押しつけながら、その現実に目を向けず保身と責任回避に走るだけの政治姿勢に全く変化が見られないからだ。ゼロ金利政策や、労働者の首を切り中小企業をつぶすような「リストラ」を続けても「景気回復」を口にしても家計収入は回復には程遠い状態が続く。普通の人々が安心してお金を使える気持ちにならない限り消費は伸びず、安定した形での景気は上向くことはないからである。

 

終身雇用と年功序列というセーフティ・ネットが崩壊する中で、国民の負担のみを増やし将来を不安にさせるような年金制度の改悪と不完全で利用しにくい介護保険の導入が進む。いずれも、未来のビジョンを失わせ、夢を奪ってしまう悪政である。

 

その根底には、自分自身の一握りの「身内」の利益のみを優先し、現実から目を逸らして身勝手な言動を続ける指導者たちの存在がある。もちろん、彼等を選んだ国民一人ひとりの責任もあるのだか。

 

こうした現実を打開するためには、「夢」の力が必要である。自分の欲望や甘えに流されずに、辛さや苦しみの現実を見つめ、その上に立って自分とより多くの人々の幸福のために何ができるのか。狭い視野で眺めていると見えないことが、広い視野で見つめ直すことで見えてくる。私のためでなく、私と家族のため…。家族や親戚のためではなく、町や国のため…。そして単に日本という国のためではなく、アジアやアフリカを含めた多くの人々のために…。そうした視点を持てば、身勝手な欲望から自由になり、埋めることのできない心の空洞も小さくなって「未来へのビジョン」=「夢」が見えてくる。

 

晩年、ユニセフの大使として活動したオードリー…。私達も、そんな「夢」を持てるような生き方をしていきたいものである。

 

 

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