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2007年2月 3日 (土)

「ピグマリオ」の味わい

幼児虐待、家庭内暴力、そしてドメスティク・バイオレンス…。家族や親と子の関係が不安定になり、時として破壊的な様相を示す現代社会。胸を痛める様々な事件は、自立に至るまでの苦難に負けてしまった人間たちの姿なのかも知れない。

 

自立とは何か。心理学の世界では、西洋的自我の確立の過程を英雄譚になぞらえながら以下のようなステップでまとめている。旅立ち、そして旅の途上で怪物と出会い、それを倒して美女を救出し、最後に彼女と結婚する。ここで怪物とはあらゆるものを飲み込もうとする悪しき意味での母性と重なる部分があり、その繋がりを断ち切る強さこそ自我の確立にとって重要となる。が、母性…あるいは女性原理を失ってはバランスが崩れるので、新たな出会い、すなわち結婚によってそれを補完するのである。

 

もっとも、このまとめ方はかなり大ざっぱで乱暴だが、ユングや河合隼雄の著作などを丁寧に読んでいくと、それなりに説得力を持っている。そうした事を意識しながら、この『ピグマリオ』という作品のストリーに目を向けてみよう。

 

主人公のクルトは、ルーンという小さな国の皇子だった。父王や周囲の人々に慈しみ育てられていたが、クルトには母親がいなかった。理由は注意深く隠されていた。が、悪神エルゾの娘メデューサによって石像に変えられてしまったのである。

 

その母ガラティアを元の姿に戻すには、母を石にした悪神エルゾの娘メデューサを倒さなければならない。石にされた人々と母のために、メデューサを求めてクルトは旅立つ。母ガラティアの妹である精霊オリエや大地の女神ユリアナに見守られながら。その旅の途上でクルトは、多くの人間や神々、そしてメデューサのしもべ・使徒の妖魔たちと出会う。そして、後にクルトの妃となるはずの星占いの少女オリエとも…。

 

次々と襲いかかるメデューサのしもべ・使徒を、女神ユリアナに借りた大地の剣で倒しながらメデューサ城を目指すクルト。だが、クルトは単にメデューサに近付くために妖魔たちと戦っているのではない。人々と語り、行動を共にしながら、妖魔や悪政に虐げられている人々の願いを背負って戦い、旅を続けるのである。

 

人々と語り、その苦痛や悲しみを背負い、共に生きようとするクルトの額に星が光る。それは、神々から時代を引き継ぎ、人々を導く『創世王ピグマリオ』の証である。共に苦しみ悲しみを背負いながら先へ進むクルトだからこそ、人々は心を動かされて共に生き、戦おうとする。そして、自らの時代の終わりを告げるクルトに、神々も力を貸そうと動きだす。そしてその力を結集してクルトはメデューサの前に立ち、クルトの剣は戦いの中でクルトを育てた闇の母メデューサの胸を貫くのである。

 

翻って、現代の日本の姿に目を向けてみよう。弱者に寄り添い、人々と苦難を共にしながら未来を切り開こうとする政治家や官僚の姿は無く、特権にしがみつき弱者を苦しめ未来を閉ざすようなことしか出来ない族と、国や国民の利益よりも外国と身内の利益を大事にして恥じない売国奴が日本を徘徊する。自ら血を流す勇気もなく、責任の取り方を知らない口先だけの指導者に、国難に対処する当事者能力はない。

 

困難は、それを乗り越えてこそ豊かな実りとなって当事者と周囲の人々に降り注ぐ。様々な妖魔との戦いを越えて、人々の心をつないでいくクルトの旅は、その物語に接する読者に深い感動と、生きる力と、困難に立ち向かう勇気とを与えてくれる。それは、本来、様々な神話が与えてくれたものであり、現在でも優れたファンタジーが私たちに示してくれるものである。

 

ファンタジー作品としての『ピグマリオ』(和田慎二/私は見ていないがTVアニメでも放映されていた)。その中に内包されたイメージには、多くのかぎが隠されている。政治の問題、親子の関係、自立の課題、愛というもの…。いくつもの読み方ができるこのマンガを読みながら、そうしたことに思いを巡らし、未来に立ち向かっていくきっかけを探るのも良いかも知れない。

 

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コメント

こんばんは^^。
遊びに来ちゃいました。
ステキなブログですね~、奥が深い!
バカブログ書いてる自分が微妙に恥ずかしくなりました^^;。

谷山浩子、中学生の頃に大FANでした。
深夜ラジオを聴くためによく夜更かししたものです。

また遊びに来ますね^^!!

投稿: ひよこ | 2007年2月 4日 (日) 02時27分

いらっしゃいませ。

コメントはともかく、本文は一応マジメに書こうと努力しているので、けっこう固い内容になってます。(その割に、マンガやアニメや…というツッコミはご容赦下さい)多くの人が笑える…というほのぼのとしたブログを作れるキャラクターではありませんので…。

それにしても、谷山浩子FANとは珍しい(笑)。けっこうマイナーだと思ってたのですが。ある谷山浩子FANの漫画家は「谷山舞奈」などというヒロインの活躍する「人類ネコ科」などというマンガを描いてましたし…。谷山浩子は幻のデビューアルバム「15の世界」も含めたすべてのアルバムをCDコレクションに完備してますので、多分、これからもたくさん取り上げます。よろしければ、また遊びに来てください。

投稿: TAC | 2007年2月 4日 (日) 13時31分

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