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2007年4月 3日 (火)

ふたり…越えていくさびしさ

大林宣彦の映画は割と好きだが、「ふたり」はその中でも特に好きな映画である。妹の実加訳の石田ひかりも悪くないが、特に、姉・千鶴子を演じた中嶋朋子の演技が強く印象に残っている。

「北の国から」の可愛い蛍ちゃん…の印象が強かった中嶋朋子だが、「四月怪談」「時計」などでも、味わいのある役をこなしており、「ふたり」は、実はとても楽しみにしていた映画だった。そして、期待にたがわず、中嶋朋子は見事な千鶴子を演じてくれた。

何でもできる優秀でしっかりした姉・千鶴子。妹としてはとても頼りになる反面、周りからいつも比較されてしまううっとうしい存在でもあっただろう。けれども、千鶴子は事故でなくなってしまう。その千鶴子の幽霊が実加の前に現れ、実加に寄り添ってくれる。その支えによって、実加も成長し、やがて、姉・千鶴子を追い抜いていく。

「お姉ちゃんなんか、どこかへ行っちゃえ !」

それは、千鶴子を越えていかなければならない実加が、千鶴子に言い放った決別宣言である。そして、千鶴子は、実加の前から姿を消してしまう。そう、千鶴子にとっても、そのままでは先には進めないのだ。と言って、高校生の幽霊のままで妹の側に留まることもできない。実加も千鶴子がいつまでも側にいれば、成長できなくなってしまう。本当の意味で実加を愛していればこそ、千鶴子は消えたのである。

実加は、千鶴子との日々を書き綴ろうとペンを取る。ふたりの時間をかみしめることで、実加は多くのことに気付き、さらに成長していくだろう。だが、もう千鶴子はいない。年齢も経験も、実加が千鶴子を追い抜き、先へ進んでいく。事故で、そして幽霊としての千鶴子を失って、そのさびしさを抱き締めながら実加は未来へ向かって生きていく。

寂しさの中に、温かさが溢れるしっとりとした映画である。

 

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