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2007年7月12日 (木)

BLOW UP ! …夢への階段

『BLOW UP !』細野不二彦が80年代末に描いた作品の1つである。主人公の菊池オサムは、大学を中退してジャズミュージシャンを目指しているサックス奏者である。そのため、実家から勘当され、アルバイトをしながら生活している。

生活に追われて、楽器さえも触れぬ日々が続き、バーをしている先輩に紹介されたキャバレーのバック・バンドやスタジオ・ミュージシャンを経験する。だが、ジャズへの情熱を持ち続け、アイドル歌手のバック・バンドをしながら昼休みの公園で仲間たちと共にカルテットを組み演奏を始める。

そのカルテットの活動が、何度か会っていたジャズ評論家の耳にとまり、やがて、一流の店でジャズの演奏を依頼されるようになる。そして、本当の意味でのライバルと呼べるサックス奏者の出現と、彼の突然の死……。

のた打ち回りながらも、夢を捨てずもがき続けることで見えてくるステップがある。だが、そのステップを上がる事と引き替えに、捨てなければならないものも出てくる。それを捨てることでまたステップを上がれるが、その事によってまた何かを失う。その痛みや辛さに耐え、それを引き受けることによって夢への階段を1段、また1段と上がっていけるのではないか。

最近の長いマンガと比較すれば、わずか2巻の短い作品である。けれども、そこには青春の夢と苦悩が凝縮されている。1人の人間にとって捨てられない夢、そしてその夢のために失わなければならないもの……。それは、人によって様々だろう。だが、夢を追い続ける事を選択し、捨てる痛みをきちんと引き受けた人間には、濃厚な生の時間が与えられる。それは、夢を追い続ける喜びでもある。

だが、必ずしもその道を選択する人は多くない。ある意味では、夢を捨てるのは楽だからである。ただ、夢を捨てた人間には平凡な生の時間が待っている。だが、それも1つの選択である。平凡な日々の積み重ねは、安定した強さをも併せ持つ。それは、地にしっかりと根を下ろし、自分の夢を別のものに変えて納得した力強さでもある。

どちらの生き方が幸福なのか……。その選択は、難しいかも知れない。だが、捨てる痛みをきちんと引き受けた夢を追う生き方は、それなりに納得できるものだし、また非常に魅力的でもある。読んでいる間にそんなことを考えさせてくれる、魅力に満ちた作品である。

 

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コメント

最近の若い人に夢はあるんでしょうかねぇ?ちょっと疑りたくなりますが。街で若い子達を見ていると、面倒だから平凡な生活を選んで生きているように感じてしまいます。たまに夢を追いかける若い人がいるかと思うと、それを実現する代償に失うものがあることを否定して、手に持っているものはそのままに、他人に完全頼り切って夢を実現させようとしているように思うのですが。うまく夢が実現しても、人のおかげで実現したことを忘れ、我が物顔でしたい放題って気はしないでもないのですが。

投稿: アサヒ | 2007年7月13日 (金) 10時42分

しっかりした若い人達もいますよ。ただ、若さゆえの未熟さや脆さもありますから、周囲の大人たちがしっかり支え、育てていかなければならないと思います。それが、大人の責任だと思うのです。

しかし、それを軽視したり無視したりしている悪しき企業文化が蔓延しています。職場で、地域で、そして社会全体で若い世代を育てる必要があります。

投稿: TAC | 2007年7月13日 (金) 20時25分

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