あぶさん…いぶし銀から野球仙人へ
水島新司の野球マンガは「ドカベン」「野球狂の詩」「一球さん」「球道くん」など、それなりに読んでいるが、コミックを全巻そろえているのはなぜか「あぶさん」だけである。だが、この「あぶさん」は息の長い野球マンガで、1巻から始まって、やがて90巻に手が届こうとしている。
主人公は、ホークスの景浦安武、通称あぶさん。野村監督が率いる南海ホークスの時代に入団し、当初は代打の切り札として活躍する。一発の長打力を持ちながら、代打であり続けるのは酒のせいでもある。いわゆる大酒のみであり、集中力は驚異的だが、体力は九回の攻守をまっとうするには不安がある…ということなのだ。だが、その集中力と一発の魅力/驚異ゆえに四番の打順であっても代打として登場できる。そんな魅力ある選手としてあぶさんは描かれている。
だが、時代はめぐり、ホークスも大阪から福岡へ移り、ダイエー、そしてソフトバンク・ホークスとなって現在にいたっている。ところが、あぶさんは今も現役。落合と三冠王を争い、門田や秋山とホームラン王を競い合った男が松坂とも対決する。99年の優勝の際には王監督の胴上げもするし、選手ばかりでなくコーチを引き受けることもある。
50歳を越えても四番を打ったり、レフトを守ってファインプレーを見せたり、歳を重ねても現役にこだわり、しかもしっかりと結果を出す。まさに野球仙人という感じである。水島マンガでは岩田鉄五郎という老投手も登場する(野球狂の詩)が、あぶさんは岩田鉄五郎の打者版という感じになりつつある。
それでも、実際にプロ野球で活躍している選手も多く登場し、わが三重県出身で明野高校からホークスに入った大道選手なども出ている。また、プロ野球を陰で支える審判やコミッショナーなどが登場する地味な話もあり、それも含めて野球マンガとして楽しむ事ができる。だが、あぶさんもいつまでグランドに立ち続けるのか…という点では、ずっと続いて欲しいという思いと共に、そろそろ休ませてあげたいという思いが交錯する。
心から酒を愛し、野球を愛する酒仙打者。南海の時代の野球職人のような描かれ方に惹かれて読み出したマンガだが、どこまで続くのかをしっかりと見届けたい作品である。
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