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2007年9月 5日 (水)

母語を大切に

教育行政の揺れと混乱の中で小学校での英語の時間が問題になっているが、関わっているいくつかの教育現場の実態から考えれば、母語の重視をもっと考えるべきだと感じている。日本の学校現場の教科でいえば国語の充実ということになろう。

少し考えれば分かることだが、私たちは自分の母語によって考え、認識し、判断して、意見や思いを表現している。その意味で、社会認識の深まりやコミュニケーション能力の向上には母語を自由自在に操れることが必要不可欠である。ところが、例えば中学3年生でも句読点の扱いや助詞の使い方があやしい子どもたちが身近にいるが、彼らは、成績からいえば必ずしも下というわけではない。そういう現実の中では、相手の話の中身や文章が的確に理解できなかったり、言葉の使い方のミスで自分の思いを正確に伝えることができなかったりすることが少なくない。これは、考えている以上に大きな問題なのである。

また、母語を自由自在に使いこなせる力をきちんとつけておくことは、外国語の習得のベースともなる。先月参加した研究会でお茶の水大学の先生が講演していた内容によれば、母語を習得する重要な時期に外国で生活していた子どもたちは、必ずしもその国の言葉をきちんと身に付けておらず、逆に母語を習得した後に外国で生活していた子どもたちの方が母語も外国語も自由に使いこなせる例が多いということをデータを示して説明してくれた。これは、私自身の実感とも重なっている。

結局、国際化の時代であっても…というよりも、国際化の時代だからこそ、母語の獲得と母語を自由自在に使いこなす能力の向上を図ることが大切になる。それによって自分自身を確立すると同時に、自分の考えや思いを表現することが可能となるし、外国の人とコミュニケーションをとるときも、それが重要になってくるのである。

ところで、母語は必ずしも「国語」と同じではないことも同時に意識しておく必要があるだろう。宮澤賢治の詩には、岩手の方言をそのまま使うことによって作品にリズムと深みを出しているものがいくつもある。あるいは、旧友とのお喋りでも方言がからむと一気に時間を飛び越えて親密な雰囲気ができる。言葉は文化でもある以上、方言はその地域の歴史と文化の土台となっているのである。

確かに、国際化の時代にあって、英語を使いこなせると非常に便利である。だが、英語で話すためには、会話を展開できる自分自身の知識や思想がそれなりにあることが大前提である。小さい頃から英語に馴染んだとしても、思いや考えのベースとなる母語を十分に使いこなせていない人間は自分自身はもちろん、「日本」を伝えていく能力がない。伝えていく内容としての「自分」や知識・文化を持っていないからである。

だからこそ、母語を大切にしなければならない。必用なのは、英語をどうこうという以前に、国語そのものをおろそかにしてはいないか、あるいは地域をおろそかにしていないか、という視点である。

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コメント

僕が小学校の高学年の頃は学校の先生から本を読むように教育されてきました。このお陰かどうかは別として以前は良く本を読んだものです。と言っても、推理小説レベルですが,,,(^^ゞ
最近ではゲーム機を持ち歩く若者はいますが本を持っている若者を見かけません。そんなところにも現代教育の問題点が見えてきます。

投稿: うるとらの音 | 2007年9月 6日 (木) 23時10分

親が本に親しんでいる姿を日常的に見せていると、割と本好きな子に育つようですね。また、読み聞かせをしてあげる事も大事です。
でも、今の親たちにそれだけの時間があるかと言うと……。社会や政治の貧困が指摘できそうですね。

投稿: TAC | 2007年9月 7日 (金) 00時17分

お久しぶりです。
いつも私のブログにはコメントを頂いているのに申し訳ありません。

うちの子は国語が苦手なんです。
小さい頃から本を読めと言っていたのですが、全くと言ってよいほど読みません。
困ったものです。
ゲームばっかり。
これって親の責任ですよね。

投稿: rockin' | 2007年9月 7日 (金) 08時52分

おいでやす。「読みなはれ」と言うのは簡単でおますが、それではあきまへんなあ。一緒に読んであげるのが一番とちゃいますやろか。

表現に、ツッコミはご遠慮下さい(笑)

投稿: TAC | 2007年9月 7日 (金) 22時09分

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