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2008年12月 4日 (木)

問題の多い裁判員制度

12月に入って、裁判員制度についてのニュースが流れた。裁判員の候補者の方にそれについての通知を発送したというものである。裁判員制度も、開始に向けての秒読みに入ったといえよう。だが、この裁判員制度は、決まってからも異論や問題点の指摘が多く、制度改革としては準備不足であり、それを見切り発車した印象が強い。

国民の実感を判決にも生かすというのであれば、もっとも必要なのは行政裁判である。下級審の画期的な判断が、控訴・上告に従って、その時点の政府や与党の都合に即した判決になってしまったような例は多い。そもそも憲法判断を突きつけられた時点で「統治行為論」なるものを持ち出したような話は裁判所の法令審査権の放棄である。最高裁がそのような無責任な態度に終始しているからこそ、先の自衛隊派遣についての名古屋での違憲判決が示すように、下級審の裁判官は職を賭けてギリギリの判決を書かなければならなかったのであり、憲法や人権についての意識を多少なりとも持つものにとっては、呆れ返ってしまうような情けない話である。

さて、裁判員を引き受けるに際して、仕事との兼ね合いで不安を感じる人が多いことがニュースでも報道されている。それに関して突っ込んだ取材がなされてないので、敢えてこの場で書いておきたいが、実は、それ自体が労働環境の悪さを示しているともいえる。裁判員に選出されても安心して仕事を休めないような労働環境の実態が国内の多くの現場に存在しているということなのである。ゆとりを持って労働できるような環境であれば、裁判員として何日か休む程度ならば、労働者の当然の権利としての年休を取るのと本来ならばあまり変わらないはずである。けれども、それができない。「ゆとり」を「効率化」によって削り続け、労働環境を悪化させたからこそ、裁判員として仕事を休むことに多くの人が不安を感じてしまうのである。

他にも、「疑わし気は罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」といった、近代裁判の大原則が無視された【素人判決】を高裁レベルでも出しているような事例や、選挙違反に関わる冤罪事件など、検察や裁判所のレベルでの法令違反の疑いや無知を感じるような話も多い。イギリスなどでは導入されて効果もあがっている取調べの完全可視化に何故か警察や検察が二の足を踏み、抵抗しているのもうなずけない。そのようなことを総合的に考えれば、裁判員制度の導入は時期尚早である。1度、開始を凍結した上で、明らかになってきている制度上の問題点を改め、労働環境を改善した上で導入するべきであろう。

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