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2009年5月10日 (日)

零戦の欠点と技術者の苦悩

零式艦上戦闘機…ゼロ戦という名で知られている日本海軍の誇る戦闘機は、実は、開発当初から欠点を抱えていた。それは、欧米に比べて重さの割りに馬力の小さいエンジンを機体設計でカバーする上で必然的に眼をつぶらざるを得なかった部分でもあった。

例えば、零戦の構造図を見てみると、その骨組にけっこうたくさんの穴が開いているのが分かる。強度という点から考えれば、これは明らかにマイナスである。けれども、馬力が十分でないエンジンで高速と運動性能を満足させようとした時、開発した技師たちは機体を1gでも軽くするという結論に達した。その結果がこの穴の存在だったのである。当然、燃料タンクや操縦席の防弾についても、スピードと運動性…つまり格闘(ドッグ・ファイト)性能の向上のために軽視され、付けられなかった。これは、発注した日本海軍の優先順位の結果削られたものだった。

そのため、激しい急降下には耐えられず空中分解を起こすことや、燃料タンクや操縦席への狙い撃ちが弱点になることについては、技術者たちは早い段階から認識していた。だが、その弱点もスピードや運動性に圧倒的に優位を誇っていた段階では目立つことなく、大きな戦果をあげることが出来た。

けれども、太平洋戦線での戦闘が激しさを増し、アメリカ軍がゼロ戦を手に入れて研究し、新たな戦法の導入と新鋭機の投入の本格化により、ゼロ戦の優位は崩れ、その欠点が原因となって苦戦を強いられることになった。当然、そうした状況の中で、現場のパイロットからも防弾の必要性を説く声が多く寄せられる。前線でP38ライトニングに撃墜されて戦死した山本五十六は、現場のパイロットとの会議の中でその必要性を痛感していたが、戦死によってその声は海軍本部にはきちんと伝わらなかった。

その後もゼロ戦は改良を重ねて前線で戦い続けたが、技術陣や現場のパイロットたちの防弾の必要性を説く声は海軍上層部によって軽視され続けた。ゼロ戦は十分な防弾装備を持たぬまま、特攻機として次々と太平洋に散っていったのである。ゼロ戦の後継機である烈風は、防弾に対する開発陣の思いから最初から防弾装備があったが、戦場に姿を見せることなく敗戦の日を迎える。設計上のバランスからすればゼロ戦に防弾装備をつける改良は難しかったかも知れないが、現場の声を聞いて少しでも早くそれに着手していれば、ベテランのパイロットはもっと生き残っていただろうし、特攻作戦とは別の作戦も考えられたのではないかと思われる。

守りを軽視し、現場の声を聞こうとせずに失敗を重ねた海軍上層部。歴史に学べば、同じ失敗を繰り返さないだろうが、日本には現場の声を聞かない「伝統」が今も少なからず残っている。例えば、全国一斉学力テスト。例えば、高齢者医療。社会のさまざまな場において、「現場の声」が無視され、決定がなされていく。ゼロ戦の悲劇は、また繰り返されそうである。

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コメント

まさにその通りです。日本の社会は現場の意見に対し、聞く耳持たずと言う所が多いですね。会社なんかに至っては、ワンマン経営の所は伸び止んで破綻。逆に、聞く耳持つ会社は伸びていますよね。

投稿: 花形 みつる | 2009年5月12日 (火) 23時37分

ベテランのパイロットたちをもっと大切にしていれば、学徒出陣/特攻以外の作戦も取れたかもしれません。そして、そのような発想があれば、操縦席の防弾は必然的に出てきたでしょう。それは、人を大切にする発想でもあります。

人を大切にする…という点では、派遣切りなどは正反対の発想です。それを安易にする企業やそれを許して恥じない政治は、根本的に人を大切にする発想はありません。当時の海軍上層部と共通していますね。

投稿: TAC | 2009年5月13日 (水) 17時20分

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